皆さん、ビルメンテナンス業という仕事をご存じでしょうか?おそらく大半の方が認知していない業種だと思いますし、具体的に何をしている業界だと知らない方が多いと思います。
- これからビルメンテナンス業界への転職を考えている(新卒・中途採用)
- 現在、ビルメンテナンス業に勤めていて、自己啓発として資格を取得したい
- ビルメンテナンス業でステップアップ(昇給・昇格)したい
- 現在の仕事が忙しすぎるため、別の業種に転職したい
- どんな業種でもいいので転職を考えている
- ビルメンテナンス業って何?
そんな方々のためにビルメンテナンス業界に25年以上勤務した筆者が、昨今の業界の状況と「ビルメンテナンス業は本当にAI(人工知能)やロボット等による代替可能性が高いのか」をテーマにお伝えさせていただきます。
この記事内では、ビル管理、設備管理、施設管理、ビルメン、ビル施設管理、建物・設備保全業務、マンション管理など様々な呼ばれ方がありますが、一括りにして「ビルメンテナンス業」と表記させていただきます。
ビルメンテナンス業とは?業種と業務の内容は?
ビルメンテナンス業での様々な業務や業種があります。代表例として以下の通り挙げさせていただきます。
不動産総合管理会社・ビルメンテナンス会社が主に対応している業務
- PM・・・プロパティーマネージャー (テナント誘致、収支レポート、市場動向調査、賃貸借契約締結など物件オーナの代行業務)
- BM・・・ビルメンテナンス、ビルマネジメント(現場や本社に常駐してビルで起こる出来事に対応するメンバー)ビルの設備が正常に動作するように点検・監視したり、不具合が出た場合の一時対応をする人員、入居者の対応など
- CM・・・コンストラクションマネジメント(主に建物管理に関する修繕や工事などの計画・立案・施工管理などを実施する)
- 清掃員・・・施設の清掃実施する業務
- 警備員・・・ビルに常駐して警備として勤務、機械警備で遠隔監視する業務
- 事務スタッフ、会計スタッフ・・・BM会社の支社・本社に常駐して、経理業務やレポート作成などが主な業務
その他でも上位職として以下のような会社や業種もございます。
資産運用会社・ビルオーナー・各企業の不動産部
- AM・・・アセットマネージャー、投資家から物件を預かり、PMやBMと連携し、より多くの収益や物件の価値向上を提案・改善する会社
- SPC・・・特定目的会社、管理物件の資産を運用するために設立された会社
- ビルオーナー ・・・その名の通りビルの所有者
- 企業の不動産部 ・・・企業が所有する不動産を管理する部署
このサイトでは主にBMというビルメンテナンス業を軸にお話を進めさせていただきます。
ビル施設管理技術者はAIやロボットで代替可能な業種に
2015年に野村総合研究所と英オックスフォード大学に共同研究で発表された驚くべき研究結果をご存じでしょうか。それは「10~20年後に日本の労働人口の 49%が人工知能やロボット等で代替可能になる」という研究結果です。
参考文献:研究結果プレスリリース
そして、AI(人工知能)やロボット等による代替可能性が高い100種の職業の中に以下の業種も含まれていました。
- ビル施設管理技術者
- ビル清掃員
- 警備員
こちらの業務は全てビルメンテナンス業が中心となって行っている業務です。つまりビルメンテナンス業は全て人が必要なくなる。当時はやはり衝撃的な出来事でした。
「将来的に自分のしている仕事はなくなるのか・・・」と、気が気でありませんでした。しかしながら、プレスリリースから8年経った2023年現在でも、なかなかAIやロボットは私たちの仕事を奪いに来てくれません。
奪いにくるどころか、より忙しくなっているようにも感じます。本当に2025年から2035年までに、ビルメンテナンス業はなくなってしまうのでしょうか。
ビル管理現場の昨今の傾向
2020年頃からのコロナ禍で、オフィス仕事はリモートワークに変化していきましたが、人の力が必要なビルメンテナンス業の現場仕事はリモートワークはできず、常に出社していました。
人の力が必要なくなるどころか、コロナ対応という業務が増え、現場の人員には様々な負担がかかっているのが現状です。
昨今の現場の人員の削減の要因としては以下が挙げられると思います。
- 人員が常駐している物件が非常駐(巡回管理)になってきている。
- 清掃用のロボットが導入され始めている。
- 各種システムが導入され始め、人の手が徐々に必要なくなっている
ただ絶対的に人手が必要な業務もありますので、現在業務に就いている方も転職を検討している方もご安心ください。
転職におすすめしない業界ではない
上記のような研究結果や人員の削減要因がありますが、ビルメンテナンス業界では現実的に慢性的に人材が不足しています。どの会社も人材を必要としています。ただ大手企業はより優秀な人材を、中小は業務拡大のために一定数以上の人員を確保したい傾向にあると思います。
多くの会社で人員を必要としていますので、現段階および将来的にも安定した雇用が期待できる業界だと思います。全てがAIやロボットに置き換わるようなことはないと思っています。
転職する際の注意点・留意点
- ビルメンは暇で楽な仕事というイメージを持っている方もいるようですが、正直配属される現場によります。過度に楽な仕事だろうと期待しない方が良いです。
- ビルメンテナンス会社にもよりますが、給与は一般的に高い方ではありません。
- 土日祝日・お盆・年末年始が休みとは限りません。
- 会社にぞんざいに扱われることもあります。大した研修もなく現場に配属されたり、頻繁に配置転換されたりということもあります。※会社によります。
- イメージ通り機械を相手にする場面もありますが、割と多くの方と接する機会があります。シャイな方よりも社交的でそれなりに人間関係が作れる方の方が向いています。
ビルメンテナンス業界に20年以上勤めた私なりの結論
常駐の物件は限りなく少数になり、求められるスキルは高くなる
ビルメンテナンスの設備管理員が、現場に常駐するのは限りなく少なくなっています。
少ない人員で多くの物件を管理したり、現場で完結できることは現場で対応するなど、やはり人員に求められるスキルは高くなっていると感じています。
高い給与は望めないが、スキルアップで昇給を目指す
2010年代後半にビルメンテナンス業で何度か転職活動をしてみましたが、どの企業も高い賃金は望めませんでした。提示された金額は最低で年収280万円~400万円弱、残業込みで+20万円程度。それなりに資格を持った筆者でさえもそうでしたので、やはり賃金は多くは望めないことが現実です。
どちらかと言えば、採用後にすぐに昇給を狙うというより、働きながら人柄やスキルアップでアピールして、待遇(役職や賃金)を上げていくことが必要だと考えています。
業務はほどほどにユルいが、相応の窓口対応を求められる
防災センターで昔のビル管理のおじさんみたいに踏ん反り返っている塩対応はダメです。それなりに丁寧な顧客対応が必要です。せめて社会人として、まともな受け答えと、フォローができないとどの会社で働くことも難しいです。
工場勤務で接客能力・対人能力に不安がある方にはおすすめしない業界です。
ビルメンテナンス業務はなくならない
私なりの結論としてビルメンテナンス業務はなくならないと思います。
遠隔でメーターを検針したり、機器のトラブルの予兆をシステムで監視したり、ロボットによる清掃が導入されたり、ということで現場で働く人員の負担は軽減されたり等、確実に現場での仕事は少なくなってきます。
しかしながら、以下は誰が対応するのでしょうか。
- トイレのつまりは誰が直すのか、蛍光灯やLEDは誰が交換するのか
- 設備的なトラブルの一時対応は誰が対応する
- ロボットが空調機のフィルター清掃ができるのか
- 現場の設備の法定点検は誰がどのように管理するのか
- 入居者の問い合わせは全て遠隔で対応可能なのか
そして、以下の部分についても疑問点が残ります。
- 大型物件で現場に警備員が不在でも問題がないように、消防法や条例が改正されるのか?
- ビル管理技術者(建築物環境衛生管理技術者)の資格者は、将来的に足りなくなるのでは?
- 不適正に管理されている物件を行政(役所や消防機関など)はちゃんと把握できるのか?
コロナ禍をきっかけに世の中の変化は大きく動き出しましたが、上記を考慮すると、「ビルメンテナンス業は最低限の人員で現場を回す手法が導入される」か「人員不在を補完する新たな事業モデルが現れる」ということも考えられますね。
いずれにしてもビルメンテナンス業務の100%がなくなることがないと信じています。
以上、「ビルメンテナンス業は本当にAI(人工知能)やロボット等による代替可能性が高いのか」について私の見解を述べさせていただきました。
コメント